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納豆文学史「納豆と文学、ときどきこぼれ話」

その5 子どもも手習いで「納豆」−『庭訓往来』

子どもも手習いで「納豆」−『庭訓往来』

『庭訓往来』は室町時代から江戸時代を通じて広く行われた初学者用の教科書です。写真は江戸時代に刊行された『庭訓往来諺解大成』(元禄15・1702年 東京学芸大学附属図書館所蔵)の一部分です。『庭訓往来』自体は室町時代初期にすでに子ども向けの教科書として行われていたと考えられている書物ですので、じつにたくさんの日本の子どもたちがこの教科書を使って勉強させられたわけです。

この本は月ごとにテーマが決められていて、それにまつわる語彙が手紙形式でつづられていくのが特徴です。「納豆」は十月の寺院の行事の精進料理の献立の一部に「…酢菜者胡瓜甘漬、納豆、煎豆…」と登場しています。

「庭訓」とは孔子が我が子伯魚を庭を通過するときに教え導いたところから「家庭教育」や「教育」を指します。卒業式でよく歌われた「仰げば尊し」の一説にある「訓えの庭にもはや幾年」もこの語に由来しています。現在の教育とは異なり、江戸時代はとにかく書いて覚えるが基本でしたから、江戸時代には寺子屋でたくさんのやんちゃ坊主たちが「納豆」という字を墨で何回も書かされていたというわけです。

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