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今年度の日本一おいしい納豆は
山下食品(株)の「心和(こころなごみ)」に決定

日本が世界に誇る総合栄養食「納豆」の日本一を決める「全国納豆鑑評会」の第21回大会が宮城県気仙沼市で開催され、全国79メーカー、総出品数194点の中から、愛知県の山下食品(株)の「心和(こころなごみ)」が栄えある最優秀賞(農林水産大臣賞)を受賞しました。

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平成28年2月19日(木)、宮城県気仙沼市の「サンマリン 気仙沼 ホテル観洋」にて開催された第21回「全国納豆鑑評会」。震災復興を納豆のように粘り強く成し遂げてもらいたい、納豆の日本一を決める大会を開催することで、地元の方々を少しでも応援できたらという想い。そして、日本酒や郷土食である「あざら」、塩辛などの発酵文化が土地の人々に根差している地域であるということ。こうした背景から、今年の納豆の日本一を決めるにふさわしい土地ということで、気仙沼市で開催することになりました。

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審査対象となる納豆は、納豆連に加盟する納豆メーカーが自社製造する納豆で、今回の総出品数は194点。内訳は大粒・中粒部門が65点、小粒・極小粒部門が68点、アメリカ大豆部門24点、ひきわり部門が37点(1メーカー各部門1点までの出品)。 審査員は、研究者・文化人・食品関係者・省庁関係者など総勢30人。評価方法は納豆の「外観(見た目)」、「香り」、「味・食感」の3項目について、秀でたものを5点、劣るものを1点として出品納豆に点数がつけられ、合計点数上位から受賞納豆が決定します。

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最優秀賞を受賞した山下食品(株)の「心和」のほか、小粒・極小粒部門および大粒・中粒部門から優秀賞が各3点、優良賞が各2点、特別賞として東北農政局長賞が各1点、永山久夫賞が各1点、ひきわり部門から全国納豆協同組合連合会長賞が1点、アメリカ大豆部門からRed River Valley U.S. Awardが1点、そして宮城大会特別賞として宮城県知事賞が1点、気仙沼市長賞が各1点、合計20点選出されました。

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集計作業中、会場では、世界納豆普及協会主催の「第5回世界納豆まぜまぜ選手権」および「第5回世界納豆のびのび選手権」が開催されました。「まぜまぜ選手権」は、納豆を混ぜる動作の美しさと混ぜる回数を競うもの。2人の出場者がそれぞれ1分間にかき混ぜた回数の合計値で争われます。地元気仙沼はもちろん、東京やアメリカから10組20名が参加し、華麗に納豆をかき混ぜました。その中で見事優勝したのは、108回という記録を出した「ファントムバルーン」さん。「ファントムバルーン」さんは、地元でマジックをされているということで、鑑評会の審査員を務めた、マジシャンのマギー審司さんから賞状と記念品、そして激励の言葉が贈られました。

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「のびのび選手権」は、混ぜた納豆から伸ばした糸の長さを競うもので、10組20名の参加者により、真剣勝負が繰り広げられました。優勝したのは、「プラザホテルチーム」さんで、記録は9.895m。表彰式では、茨城県非公式キャラクター「ねば〜る君」から賞状と記念品が贈られ、「プラザホテルは名前を変えて“納豆ホテル”にしてネバ〜!」とコメントし、会場中から笑いが起きました。

このほか会場では、「がんばろう!日本!納豆屋プロジェクト」が支援するNPO団体の活動報告が行われ、一般社団法人kotネットワーク本吉の阿部寛行様はじめ5団体の方々が活動内容を発表しました。

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さらに、一般社団法人気仙沼観光コンベンション協会副会長の寶田和夫様が、「気仙沼地方の郷土料理食について」と題して、気仙沼の郷土食である「あざら」について講演。寶田様のお話によると、「あざら」とは、酸っぱくなった白菜漬けを酒粕とメヌケのあらと共に煮たもの。正月過ぎ、各家庭で漬けた白菜の残り物を煮たところから始まったと考えられているようです。

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続いて、東京農業大学教授の木村俊昭様が「地域創生戦略の着眼点―地域を元気にする処方箋−」について講演しました。講演の中で木村先生は食育について触れ、「ただ単に地元の旬な食材を子供に食べさせることが食育と考えるのではなく、8歳までに8000個、12歳までに1万2000個ある小脳・大脳を鍛えるために、甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、うま味を繰り返し体験させることが食育。なぜ食育するのか理由を考えることが大切だ」とお話されました。

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また、三陸鉄道株式会社・代表取締役社長の望月正彦様が、「三陸鉄道 復旧・復興の取り組み」と題して、震災後に三陸鉄道が歩んできた道をお話してくださいました。望月社長は、被災の経験を踏まえて、「災害はいつ来るか分かりません。災害が起きる前にどこに逃げるか、連絡方法をどうするかを決めることが一番大事だと思う」と力強く語りました。

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さらに、「ねば〜る君」が、会場近くにある葦の芽幼稚園を訪問し、園児たちと「納豆ダンス」を元気いっぱい踊りました。納豆が大好きという園児が多く、「今朝納豆を食べた人は?」という質問にほとんどの園児が手を挙げてくれました。

 被災地を応援したい、少しでもお役に立てればとの想いから開催された、今回の気仙沼市での全国納豆鑑評会。会場を盛り上げてくださった一般来場者の方々や貴重な講演をしてくださった皆さん、そして報道関係者の方々、本当にありがとうございました。

来年度の第22回全国納豆鑑評会は京都府京都市で開催される予定です。

以下、審査員のコメントを付記します。

講評

全国納豆協同組合連合会 会長 野呂剛弘

震災以降、納豆連では「がんばれ!日本!納豆屋プロジェクト」を立ち上げ、被災地支援を続けてきたが、今回の気仙沼市での開催にあたりたくさんの方々にご協力いただき、逆にこちらの方が元気づけられ、本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。
審査はひきわりとアメリカ大豆部門を担当。例年に比べて、飛びぬけて良いものとそうでないものの差がはっきりしていた。ひきわりで1点、アメリカ大豆で2点ほど、気持ちが明るくなるほど本当に良い納豆があった。年々、全体的なレベルは間違いなく上がってきており、それだけにあまり良くないものがあると目立つように感じる。

全国納豆協同組合連合会 副会長 工藤茂雄

気仙沼市での鑑評会開催ということで、感慨深いものがある。
小粒部門を担当した。本当にひどいという納豆はほとんどなく、差をつけにくかった。その中で、特段においしく、高得点をつけたのは、後味が納豆らしく乗っているもの。小粒は大粒に比べ味が乗りにくいのだが、しっかり乗っていて食感もよかった点を評価した。

須見洋行さん(倉敷芸術科学大学 教授)

大粒を担当したが、黒豆や麦の入った納豆などそれぞれ特徴が違うので、一つの部門で比較するのは難しかった。長期熟成したような、昔ながらの納豆に近いものを評価した。
出品納豆のレベルは、年々腕が上がってきていると感じた。

木村俊昭さん(東京農業大学教授)

ひきわり・アメリカ大豆部門を担当した。61種類の納豆を審査したが、全て味やねばり、粒の大きさ、輝きが違うので驚いた。口に入れた瞬間に食感がよく、硬すぎず柔らかすぎない、噛んでいるうちに甘みやうま味が出てくる納豆を高く評価した。

長谷川裕正さん(茨城県工業技術センター 主席研究員)

ひきわり・アメリカ部門を担当した。両方とも良いものはあったが、チロシンが出ていたり、糸引きが弱いものも散見されたので、今後製造状況を改善するなど、品質改善が必要だと思う。良いと感じた納豆は、見た目の色と糸引き、変な臭いがなく、食感が硬すぎず柔らかすぎず口の中でねっとりと潰れていくといった点を評価した。全体のレベルは上がってきていると思うが、若干皮剥けや割れが見られたので、そこを改善するともっと良くなると思う。

望月正彦さん(三陸鉄道株式会社 社長)

震災直後に、三陸鉄道での「納豆列車」やミス納豆によるイベント開催など、納豆連の皆さんからは多大な支援をいただいた。今回審査員としてお声をかけていただいて、喜んで参上した。三陸沿岸の地域は復興にはまだ時間がかかる。そうした中、気仙沼を元気にということで鑑評会を開いてくださり本当にありがたい。実際に審査してみて、本当に色んな納豆があるのだと驚いた。多くの方にどんどん納豆を食べていただきたいと思った。

マギー審司さん(マジシャン)

初めて参加したが、納豆は好きだし、私の地元である気仙沼での開催ということでとても嬉しい。64種類もの納豆を審査するということで、違いが分かるかなと思っていたが、いざ食べてみると納豆の大豆のうま味が分かってきて、硬さやうま味・甘み、食べたときのインパクト、見た目も違うので驚いた。これからは納豆を食べる際に、たれをつける前に納豆そのものの味を味わってから食べたいと思った。