■農林水産大臣賞
みのり納豆 ほのか
有限会社ミドリヤ
代表取締役 村上利勝さん
納豆づくりに終わりはありません。毎日の小さな改善の積み重ねが、やがて大きな実を結ぶ。今年度の全国納豆鑑評会で、有限会社ミドリヤの「みのり納豆 ほのか」が最優秀賞(農林水産大臣賞)に輝きました。令和2年の第25回大会および第27回大会で優秀賞を受賞していた同社にとって、最高賞の受賞は長年の努力が実を結んだ瞬間でした。
「正直、最優秀賞という結果を聞いた時は『うちが』という素直な気持ちでした」と村上利勝社長は受賞の瞬間を振り返ります。同社は令和2年の第25回大会で優秀賞を受賞した実績がありますが、「最優秀賞となると、やはり襟を正すという気持ちでした」と、より一層の責任を感じている様子です。
特筆すべきは、同社が地元の小学校給食に約98%を納品していることです。「子どもたちは大人と違って忖度しません。まずいものはまずいと言います。だからこそ、子どもたちに慕われる納豆を作ることを意識してきました」と村上社長。実際、給食で提供される納豆の評判は家庭にも広がり、「うちの子は納豆が食べられなかったのに、学校の給食の納豆は食べられるんです」という声も寄せられているそうです。
製造面では、素材の特徴を最大限に活かすことにこだわっています。「工場長が常に言っているのは、素材をいかに引き出すかということです。大豆の種類によって特徴があり、例えば皮が硬い品種はどう柔らかく仕上げるかなど、様々な工夫をしています」。
受賞後、街中で声をかけられることも増えたと村上社長は話します。「コンビニにいると知らない方から声をかけられて驚きます。これまでの優秀賞受賞時にはなかったことです」。多くのメディアからの取材依頼も増え、地域での認知度が一層高まっているようです。
今後について村上社長は「受賞に慢心することなく、受賞時の納豆の品質をそのまま保ち、もしくはそれ以上になるように日々精進していきたい」と語ります。また、今年日本の伝統的な酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録されたことに触れ、「発酵食品としての納豆の価値も、今後さらに世界的に認められていくことを期待しています」と展望を語りました。
今回の審査では、最終選考に残った4社の品質が非常に接近していたそうです。「どこが受賞してもおかしくないほどの僅差でした。この最優秀賞は当社だけのものではありません」と村上社長は謙虚に語ります。また「福島県は納豆消費金額で4年連続全国1位でしたが、今年は9位になりました。これを機に、納豆王国・福島の復活にも貢献していきたい」と、地域の納豆文化への思いも語っていただきました。
各地域に根付いた納豆文化を守り、次世代に伝えていくこと。そして、その多様性を活かしながら新たな価値を生み出していくこと。ミドリヤの受賞は、地域に根ざした食品製造業の持続可能な未来への道筋を示してくれているのかもしれません。