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納豆健康学セミナー

東京・千代田区 科学技術館において
「第10回納豆健康学セミナー 」を開催

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2014年5月9日、東京・千代田区 科学技術館において、「第10回納豆健康学セミナー 」を開催しました。


昔から健康に良い事が広く体験的に知られてきた、日本を代表する伝統食品である納豆。近年、健康医学、薬学、人文学など多分野で研究が続けられており納豆の機能性が次々と科学的に解明されてきています。


「納豆健康学セミナー」は、納豆研究の第一線で活躍されている研究者の最新研究結果を提供し、幅広い分野での「納豆の魅力」を広く伝えてもらうことを目的とし、平成15年より開催されてきました。 今回が10回目の開催となります。


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当日は多くの一般聴講者、マスコミ関係者が訪れる中、納豆研究者の先生方お2人をお招きし医学的見地、文化的見地より納豆に関する最新の研究成果を発表していただきました。


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セミナー冒頭、全国納豆協同組合連合会(以下:納豆連)の野呂剛弘会長が「皆様もご存知のように納豆は古くから『健康に良い』とされ日本人に食べ続けられてきた伝統食品であります。近年の研究で、この体験的に広く知られてきた『納豆が健康に良い』ということを裏付ける科学的根拠が見つかってきています。例えば、納豆に多く含まれるポリアミンという成分が大腸がんの発生・発症の抑制などの効果があることや、納豆菌が醸すビタミンK2は骨形成を促進させることなど、次々と最新情報が更新され、研究が進むにつれ、納豆は我々が思っていた以上に大きな可能性を秘めている食品である事が分かってきました。
『納豆ほど人間の体に有効な食品は世界中探してもないのではないか』と私は考えております。
納豆連ではこうした納豆の魅力をより多くの人にお伝えしていくこと、安全で高品質な納豆を供給することを大きな役目であると考え、様々な活動を展開しゆきたいと思います。」と挨拶をしました。

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続いて、納豆連 研究・PR委員会 伊藤孝委員長が「納豆連では研究・PR委員会を設置し様々な研究活動を通じて日本の伝統食品である納豆の普及と消費拡大につとめております。近年、ポリアミンやビタミンK2など世界の研究者から注目される機能成分が納豆から相次いで発見された事により納豆は機能性食品として認められ、それにともない消費量の少なかった地域でも、随分納豆が食べられるようになってきました。一方で消費者の食品を選ぶ目はますます厳しくなっており、食品の機能性に対して相応の科学的な裏付けが求められるようになってきました。
『納豆健康学セミナー』は、様々な異なる専門性を持つ研究者に納豆という共通のテーマを各分野の視点から研究・発表いただく場です。こうした場を設けることで、納豆の良さが広く伝われば良いと思います。
今後も納豆の最新研究のPR・普及活動を通じて正しい機能性の認知拡大に努めてまいります。」と挨拶をしました。

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まず、最初に登壇されたのは、筑波大学 人文社会系 石塚修教授です。
「納豆からナットウへ〜納豆の国際的食品としての視点」と題し、歴史的見地、地理的見地からみた日本人と納豆についての最新研究を発表していただきました。


石塚先生は昨年12月に世界無形文化遺産に和食が登録された理由として「栄養バランスに優れた健康的な食生活」「自然の美しさや季節の移ろいを表現する料理」などがあることを語り、それから現代人の和食を食べる割合が少なくなっている事を指摘。
あるデータでは現代の子供達の好きな食べ物ベスト3は「1位カレー、2位スパゲティ、3位ハンバーグ」とすべて洋食となっており、このことから日本の伝統的な食文化が失われつつあると危機感をお伝えいただきました。伝統食継承には家庭の食文化の健全化が必用。和食の基本である一汁三菜を再び家庭で実践していく事が大切とし、さらに一汁一菜に納豆を取り入れるべきだと話されました。

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歴史的に見ても納豆は和食になくてはならない重要な食べものでした。納豆は古くは納豆汁として親しまれ、和食の基本とする一汁三菜に多く用いられていました。千利休の茶会の懐石料理にも納豆汁を非常に多く用いていることが記録されています。また、納豆汁は冬に体を温めるためのタンパク源として、重要な食べものでした。

次に、納豆文化はどのように広がって行ったのかについてお話しいただきました。
温度管理の出来ない当時の納豆作りには非常に手間ひまがかかり、貴重な食べ物とされていました。それでも納豆は山間部を中心に広まっていきました。
その最大の理由は「体に良い」食べ物ということ。納豆を食べると「病気にならない」「長生きする」といった事実が口伝えで何世代にも語り継がれ、納豆文化は広がっていったと予想されます。

石塚先生は「体に良い食べ物は広く伝わって行く。それが食文化なのです。同じ自然環境にあり体に良い食べ物であれば普遍的に食べられていた。」と話し、日本以外にも納豆に似た食品が食べられている地域があると、民族学者の中尾佐助が指摘した「ナットウの大三角形」を引用し、日本、ヒマラヤ、ジャワを結んだトライアングルの中に納豆を食べる食文化が存在する事を解説されました。(「豆の料理」『中尾佐助著作集 第U巻』2005 北海道大学図書刊行会:初出/『料理の起源』NHKブックス1997 )

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しかし、同じ納豆文化でも食べ方はそれぞれ異なり、日本の納豆のように納豆汁や納豆餅として食べられているというわけではなく、タイのナットウ(トゥア・ナオ)、韓国のナットウ(チョングッチャン)を例に挙げ、それぞれ独自のナットウ文化(大豆発酵食品)が存在している事を話されました。 また、納豆文化が生まれる共通点、その地理的特徴が水田稲作地帯であることとし、納豆は稲作文化とともに国際的な広がりを持つ食品であると、納豆文化が生まれる条件についても述べられました。


最後に、明治時代の軍師、石塚左玄(1851-1909)が「食べ物で体を健康に」と提唱するマクロビオティックス(食養)が日本で流行する兆しがあることについてふれ、今後ますます、納豆は注目される食品だと締めくくりました。


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続いて、東京大学大学院医学系研究科 疾患生命センター分子病態医科学 宮崎徹教授の講演に移りました。


「最先端の科学がとらえた現代病の実態とその克服?AIM分子と納豆の可能性?」と題し、AIM分子と肥満に伴う様々な疾患群についての研究成果をお話しいただきました。


先生は、「近年におけるライフスタイル、特に食習慣の急激な変化に伴って、肥満に伴う様々な疾患群が急速にクローズアップされています。肥満に伴う疾患群の中には糖尿病や動脈硬化といった生活習慣病だけでなく、自己免疫疾患、脂肪肝から進行する種々の肝臓疾患、慢性腎臓疾患、など非常に多岐にわたる疾患群を形成しています。 こうした多岐にわたる疾患群の予防、治療の鍵となる分子がAIM分子なのです。」と、まずAIMの可能性を述べられました。

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このAIMは元々人間の血液の中にあるタンパク質で脂肪細胞内に取り込まれ蓄積した中性脂肪を分解しています。つまりAIMは肥満や脂肪肝に対するブレーキとして作用していると考えられています。 「太りやすい体質の人ほど血中AIM濃度が低く、逆に太りにくい体質の人ほどAIM濃度が高いと予想され、太りやすい人と太りにくい人がいるのは、このAIMの濃度が影響しているとされています。」と、宮崎先生はAIM濃度が極度に高いと太りにくいといったことを、大食いタレントを例に上げ説明されました。


ところが、AIMの血中濃度が必要以上に高いと、過剰な脂肪滴分解によって高濃度の脂肪酸が細胞外に放出されるために炎症を誘導し、それが糖尿病や動脈硬化あるいは自己免疫疾患などの様々な生活習慣病の疾患連鎖を惹起してしまい、逆に低すぎると脂肪を分解する力が低いので脂肪肝が悪化し肝ガンなどを惹起する恐れがあります。 つまり適度な血中AIM濃度を維持する事が、様々な生活習慣病の予防に極めて重要であると考えられると話されました。

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「では、納豆はAIM濃度にどのように関係してくるのか。近年の研究で、納豆を食べ続けるとAIM値が有意に低下する事が明らかになりました。つまり納豆を食べると肥満に伴う様々な疾患群の予防に効果がある事が分かりました。これは昔から言われている納豆の動脈硬化や糖尿病に対する抑制効果を裏付ける一端になるのではないかと考えられます。」とお話しいただきました。


最後に宮崎先生は、納豆を食べ続けると、AIM値が高い方は低くなり、AIM値が低い方は高くなるといった、AIM値を適正に戻してくれるのではないかという個人的見解を語られ、納豆の持つ機能性にますます期待していると公演を締めくくりました。


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およそ3時間に渡り行なわれた「納豆健康学セミナー」。最後は質疑応答が行なわれ、出席者からの質問に両先生は丁寧に答えて下さいました。


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今後も納豆連では「納豆健康学セミナー」を通じて、様々な分野の研究者による最新の研究結果から、知られざる納豆の魅力をお伝えし、納豆の普及、正しい機能性の認知拡大に努めてまいります。どうぞ御期待下さい。