1. トップ
  2. 納豆健康学セミナー
  3. 第十二回「納豆健康学セミナー」

納豆健康学セミナー

東京・港区 TKP品川カンファレンスセンターにおいて
「第12回納豆健康学セミナー 」を開催

2016年3月18日、東京・港区 TKP品川カンファレンスセンターにおいて、「第12回納豆健康学セミナー 」を開催しました。

写真

日本を代表する伝統食品である納豆は、健康医学、薬学、人文学、地理学など多分野で研究が続けられており、機能性食品としての科学的な解明、納豆と日本人の歴史的な関わり方が次々と解明されてきています。


全国納豆協同組合連合会(以下:納豆連)では、納豆の知られざる健康効果や魅力を学術的に解明していく事が、今後の納豆業界と世界の人々の健康に寄与するものとし納豆とその周辺領域を研究する学問を「納豆健康学」と位置付けてきました。

「納豆健康学セミナー」は、第一線で活躍されている様々な異なる専門性を持つ研究者が「納豆」という共通のテーマを各分野の視点から捉え、その最新研究結果を提供し、幅広い分野で「納豆の魅力」を記事、報道に活用してもらうことを目的に開催されてきました。
今回が12回目となります。

写真

当日は納豆好きの一般聴講者、多くのマスコミ関係者が訪れる中、「納豆健康学」の第一線から2名の先生方をお招きし、医学的見地、食文化的見地より納豆に関する最新の研究成果を発表していただきました。


写真●野呂会長挨拶
セミナーの初めに、納豆連の野呂剛弘会長が「日本の伝統食品である納豆は、古くから健康に良い食べ物として広く知られていましたが、具体的に納豆の何が健康に良いのかはどこか漠然としていました。
それが、近年の研究で納豆にメタボリックシンドロームに対する改善効果や、アンチエイジングに有効な成分が含まれている事など、その機能性が次々と科学的に解明されてきています。
納豆連では医学、科学的見地、また、食文化、地理学的な見地から、納豆の健康効果や魅力を学術的に解明し、最新の研究成果を発表していく事を重要な役割の一つと考え、『納豆健康学』を通して国民の健康に寄与する有用な情報を発信し続けていきたいと思います。」 と挨拶をしました。

写真

●続いて、納豆連 研究・PR委員会 相沢勝也委員長が「国民健康食として親しまれる納豆の成分には、骨形成を促すビタミンK2、アンチエイジングや大腸ガンの抑制成分とされるポリアミンが含まれるなど、様々な機能を有している事が判明しており、私たちの健康に寄与している事が分かっています。
さらに、肥満抑制や、すい臓ガン、肝臓ガンを予防する効果があるとされる血中タンパク質『AIM』を適正に保ってくれる作用があるという論文が新たに発表されるなど、納豆の機能成分は現在も発見され続けており、納豆は単なる食品を超えた機能性食品として世界的に認められています。 団塊世代の平均年齢が65歳をむかえ少子高齢化が進行している昨今、政府は日常の食生活を通じての健康管理による医療費の削減を国策として推進しています。 納豆連では機能性食品である納豆を含めた『毎日の食を通じた健康管理』を推進・PRする事で 微力ながらも日本人の健康長寿に貢献していきたいと思います。」と挨拶をしました。

続いて各研究者の発表です。

●最初の発表者は、千葉大学大学院医学研究院小児病態学教授 下条直樹先生です。

写真

「妊娠中のお母さんの食生活とお子さんのアレルギーの関連 -納豆の摂取の効果も含めて-」と題し、医学、科学的見地から納豆とアレルギーに関する最新の研究成果を発表していただきました。

下条先生は始めに「日本人の3分の1が何らかのアレルギーの病気にかかっていて、いまやアレルギーは国民病と呼ばれている」と社会の近代化に伴いアレルギーが急増している事を指摘し、その主たる原因として、大気汚染、生活習慣、食生活の変化を挙げられました。

次に、アレルギー疾患は糖尿病、肥満、動脈硬化、心臓病、ガンなどの生活習慣病の原因となる慢性炎症の最も早く現れる疾患である事を解説し、「アレルギーを抑える事ができれば生活習慣病を含む多くの疾患を予防できると考えられる」と述べられました。

写真

そして、本題である「妊娠中のお母さんの食生活とお子さんのアレルギーの関連」について話をされました。
「アレルギーの第一歩である乳児期のアレルギー発症を抑えるには、出生後の環境だけでなく赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時の環境が大事だと考えられています。
妊娠中の母親が、魚(ω3系不飽和脂肪酸を多く含む)やヨーグルト摂取が生まれてくる赤ちゃんのアレルギーを予防する可能性を示す研究結果が主にヨーロッパから報告されてきた結果を踏まえ、日本人にとって重要な発酵食品である納豆、魚、バター、マーガリン、ヨーグルトの妊娠中の摂取頻度とお子さんの生後6か月でのアトピー性皮膚炎の関連を約650人の妊婦さんを対象に調査しました。」と、調査概要を説明し、「その結果、妊娠中に納豆を毎日摂取する妊婦さんから生まれた子供はアトピー性皮膚炎が少なく、バターを頻回に摂取する妊婦さんから生まれた子供はアトピー性皮膚炎が多く、魚、マーガリン、ヨーグルトは特に影響がないという事がわかりました。」と調査結果を報告しました。

最後に、今回の調査データは様々な外的因子を計算した、非常に精度の高いデータである事を強調し、「納豆を毎日食べている妊婦さんから生まれた子供は、納豆を食べない妊婦さんから生まれた子供と比べて約3、5倍アトピー性皮膚炎になりにくい」と具体的な数字を使って紹介。
「納豆が妊娠中のお母さんに良い影響を与えている事は、ほぼ間違いない。納豆には生まれてくる子供のアレルギー発症を抑える効果があると考えられる」と妊娠中に納豆を毎日食べると、子供はアレルギーになりにくいという、納豆の新たな可能性を見出し講演を締めくくりました。

写真

●続いて筑波大学 人文社会系教授 石塚修先生の講演です。
「納豆の起源をさぐるー和歌山県海草郡紀美野町真国地区を例としてー」と題し、食文化的見地から納豆の起源について最新の調査結果を発表していただきました。

石塚先生は始めに、「納豆の起源」について話されました。
中国雲南省辺りを起源とする今西錦司氏らによる「照葉樹林文化論」や中尾佐助氏による「納豆の大三角形」、横山智氏の「納豆の起源」など、納豆の起源に迫った文献。そして、全国に残された源義家などの納豆発祥の伝説を紹介し、「正直、納豆の起源は分かりません」と納豆の起源が未だに解明されていないと笑いを交えながら解説されました。
その後、石塚先生の仮説として「納豆は一定条件を満たした地域で同時多発的に誕生し、納豆を食べると「病気にならない」「長生きする」といった事実が口伝えで何世代にも語り継がれ、納豆文化は広がっていったと予想される。」と述べられました。

次に、「関西人は本当に納豆を食べないのか」について話されました。 「かつては関西では納豆が食べられていた記録がたくさんあります。」と千利休の茶会で納豆汁が出されていた事、京都の常照皇寺には上皇と納豆にまつわる伝説が残されている事を紹介し、 かつて関西でも納豆食文化が根付いていた事を示されました。
では、いつ頃から関西では納豆が食べられなくなったのか。
「もともと関西では納豆は専門業者が製造・販売するものではなく、家で作るものだったのです。明治以降、農家が減ってきて、家で納豆を作る人が少なくなっていくとともに、納豆を食べる食文化がすたれていったのです。」と関西人と納豆について解説されました。


写真

最後に、納豆消費量が少ない和歌山県海草郡紀美野町真国地区に納豆を自家製する文化が現存している事を紹介し、なぜ、紀美野町真国地区には納豆を自家製する文化が根付いているのか解説されました。
「紀美野町真国地区の納豆食文化には真国丹生神社が深く関わっていると考えられます。
天照大神の妹である丹生都比売尊(にうつにめのみこと)を祀る真国丹生神社には神事に納豆を作る文化があり、同じく、丹生都比売尊を祀る滋賀県大津市仰木地区の小椋神社でも神事に納豆を作る文化が存在します。これは神社の信仰と共に納豆食文化が伝播しているという事です。和歌山県海草郡紀美野町真国地区の納豆食文化は真国丹生神社の神事と共に根付いていったと推測されます。」と紀美野町真国地区を例に納豆食文化が根付いていく理由を述べられました。


●およそ三時間に渡り行なわれた今回の「納豆健康学セミナー」。  最後は質疑応答の時間が設けられ、出席者からの質問に先生方は丁寧に答えて下さいました


写真

今後も納豆連では「納豆健康学セミナー」を通じて、様々な分野の研究者による最新の研究結果から、知られざる納豆の魅力をお伝えし、納豆の普及、正しい機能性の認知拡大に努めてまいります。どうぞ御期待下さい。