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アンチエイジングの本命=高ポリアミン食

自治医科大学大宮医療センター
総合医学2・大学院
早田邦康氏

疫学調査からの検討

生活習慣病を抑制すると提唱されてきた物質の殆どのものが、ヒトを対象にした検討では効果を確認することができないという残念な結果は、多くの研究者が知っていることである。これらの物質の大半は長寿に寄与している食物中に多量に存在する物質を抽出したものであり、試験管内や動物実験で生活習慣病の抑制に寄与する可能性のある作用が確認されている。にもかかわらず、これらの物質がヒトで効果を発揮できないという結果は、多くの混乱を招いている。なぜならば、これらの成分を多量に含んでいる食品には生活習慣病の発生を抑制していると考える事のできる疫学調査結果が数多く存在するからである。現在、研究者の一部は、食品中に含まれる複数の有効成分が複合的に作用して生活習慣病の抑制効果を発揮しているのではないかと提唱している。しかし一方では、我々がこれまで認識できていなかった物質がこれらの食品には存在しており、その物質が生活習慣病を予防する効果を発揮していると考える事もできる。

長寿や老化に伴う生活習慣病を抑制している食物や食習慣には、@動物の肉より魚の肉を多く摂取している、A動物の油より食物油や魚油を多く用いている、B大豆などの豆類を多く摂取している、Cチーズなどの発酵食品を多く摂取している、D野菜や果物、もしくはジュースを多く摂取している、などが疫学調査の結果から挙げられている。@とAにはn3系の不飽和脂肪酸と呼ばれているイコサペント酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が含まれており、動脈硬化の進行を抑制するように作用する事が明らかにされている。EPAやDHAは疫学調査の結果をもとに、魚に含まれる成分を抽出した結果得られた物質であるが、その作用機序も解明され、ある条件下では効果を発揮している事がわかった物質である。一方、B、C、Dではそれぞれ異なる物質が作用していると考えられてきた。Bで代表されるのは女性ホルモン様作用や抗酸化作用を有するイソフラボンなどであり、Dで代表されるのは抗酸化作用のあるポリフェノールであった。しかし、ヒトにおける多くの介入試験の結果、これらの物質による生活習慣病の予防効果や老化の抑制効果は認められていない事は前述した。また、Cは腸内細菌の安定に関係していると考えられているが、どのような物質がどのような機序で生活習慣病や老化の進行抑制に寄与しているかは不明である。すなわち、「大豆などの豆類や発酵食品や果物や野菜は生活習慣病の発症を抑制しているが、どのような成分がどのような機序で効果を発揮しているのかは判らない」というのが現状である。

非常に興味深いのは、ポリアミンがB、C、Dに共通する物質であるという事実である。

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